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AWS の Amazon EBS高速スナップショット復元( FSR )とは?

 AWS でスナップショットから Amazon  EBS を作成する、すなわちスナップショットの復元はリストア作業や検証作業でよくあることです。

弊社の cloud link 保守サービスにおいても AMI ・スナップショットを日次で取得しておりますので、必要に応じてリストア作業や検証作業のためにスナップショットの復元を行っております。

高速スナップショット復元とは Fast Snapshot Restore 、略して FSR です。その名前の通り高速にスナップショットを復元する機能です。

今回は AWS 高速スナップショット復元( FSR )の概要、メリット、手順、注意点についてまとめました。

AWS 高速スナップショット復元( FSR )の概要

そもそもの大前提として高速スナップショット復元( FSR )ではない通常スナップショット復元について理解をする必要があります。

▼参考:Amazon EBS ボリュームの初期化
スナップショットから作成されたボリュームの場合、アクセスする前に、ストレージブロックが Amazon S3 からプルダウンされてボリュームに書き込こまれる必要があります。この事前処理には一定の時間がかかるため、各ブロックへの初回アクセス時には、I/O 操作のレイテンシーが著しく増加する可能性があります。ボリュームのパフォーマンスは、すべてのブロックがダウンロードされてボリュームに書き込まれると正常値に達します。

引用元:https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/AWSEC2/latest/UserGuide/ebs-initialize.html

 AWS の公式にも記載されている通り、スナップショットから EBS ボリュームを作成した場合、事前処理が完了するまでの間は I/O レイテンシーの増加によりパフォーマンスが低下します。

高速スナップショット復元( FSR )は高速にスナップショットを復元する機能です。具体的には高速スナップショット復元( FSR )を有効化した状態でスナップショットの復元を行うと、完全に初期化された状態で EBS ボリュームの作成ができます。つまり通常のスナップショット復元で行われる事前処理が完了している状態で即座にフルパフォーマンスを発揮できます。

AWS 高速スナップショット復元( FSR )のメリット

高速スナップショット復元( FSR )を行えば事前処理が完了している状態で使用できるため、通常のスナップショット復元にて発生する I/O レイテンシーの遅延を気にすることなく、即座にフルパフォーマンスを発揮できます。

通常スナップショット復元におけるパフォーマンスの低下はどの程度の影響になるのでしょうか?

通常の OS システム領域などであれば問題になることはほとんどありません。

しかしながらデータベースのデータ領域のように IO 性能がパフォーマンスに影響を及ぼすシステムの場合は、 I/O レイテンシーの遅延がパフォーマンスにもろに影響するため、ここで高速スナップショット復元( FSR )を活用することができます。

AWS 高速スナップショット復元( FSR )の手順

  1. 高速スナップショット復元( FSR )を行うスナップショットを選択し、アクション→スナップショットの設定→「スナップショットの高速復元を管理」を選択します。
  1. 高速スナップショット復元( FSR )はアベイラビリティーゾーン( AZ )単位で設定できます。この画面ではまだ何も設定していないため、各 AZ ごとのステータスはいずれも無効となっています。
  1. 高速スナップショット復元( FSR )を行いたい AZ すべてにチェックを入れ、「有効化」をクリックします。ここでは ap-northeast-1a のみにチェックを入れています。 EBS ボリュームをアタッチするAZに対して有効化する必要がある点ご注意ください。
  1. 問題ないことを確認し、「有効化」をクリックします。
  1. 有効化されるまでには容量に比例した時間を要します。この画面では有効化を行っている最中でまだ完了していないことを意味しています。
  1. 有効化が完了すると、この画面のように現在のステータスが「有効」と表示されます。
  1. スナップショット一覧画面でも有効化が完了していることを確認できます。
  1. あとは通常スナップショット復元と同様の手順です。高速スナップショット復元( FSR )を有効化したスナップショットを選択→「スナップショットからボリュームを作成」を選択します。
  1. 高速スナップショット復元( FSR )を有効化した AZ を選択することで高速スナップショット復元欄に「選択したスナップショットで有効になっています」と表示されていることを確認し、 EBS ボリュームを作成します。その後は EC2 にアタッチすれば完了です。

AWS 高速スナップショット復元( FSR )の注意点

事前処理無しでフルパフォーマンスを発揮できるので常に高速スナップショット復元( FSR )をすればよい、というわけではありません。以下注意点です。

1.追加料金が発生する

▼参考:Amazon EBS の料金
Fast Snapshot Restore (FSR) を使用すると、ボリュームまたはスナップショットのサイズに関係なく、完全にプロビジョニングされた EBS ボリュームをスナップショットから迅速に復元できます。ユーザーは、自分で所有するスナップショット、または自分と共有されたスナップショットで FSR を有効にすることができます。FSR の課金は、それが有効化された各スナップショットおよび各アベイラビリティーゾーンでの、データサービス単位時間 (DSU/時間) に基づきます。DSU とは、最低 1 時間、分単位で請求されることを意味します。FSR が有効なスナップショットでは、無効にするまで、引き続き料金が発生します。

引用元:https://aws.amazon.com/jp/ebs/pricing/

「有効化している時間」に応じた料金体系となっているので、高速スナップショット復元( FSR )を有効化した EBS ボリュームを作成後は、速やかに高速スナップショット復元( FSR )を無効化しましょう。忘れるとどんどん料金が発生してしまうので注意です。

2.有効化には EBS ボリュームの容量に応じた時間がかかる

▼参考:Amazon EBS 高速スナップショット復元
optimizing — 高速スナップショット復元の有効化中です。スナップショットの最適化には TiB あたり 60 分を要します。最適化されたスナップショットにより、ボリュームのリストア時のパフォーマンスに関し、一定のメリットが得られます。

引用元:https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/AWSEC2/latest/UserGuide/ebs-fast-snapshot-restore.html

つまり 1 TBあたり約 60 分、 1 GBあたり約 3.51 秒、 100 GBあたり約 351 秒( 6 〜 7 分)、有効化するにあたっての時間がかかることになります。

スナップショットの容量次第ではすぐに高速スナップショット復元( FSR )を有効にしたくでもできないという状況もありえます。事前に高速スナップショット復元( FSR )を有効化するのに要する時間を確認することと、用途に応じて例えば以下のように使い分けするとよいです。

・通常スナップショット復元:障害発生時等、復旧スピードを重視する場合等

・高速スナップショット復元( FSR ):検証や計画作業、FSRの有効化時間が許容できる場合等

最後に

いかがでしたでしょうか。高速スナップショット復元( FSR )は最初からフルパフォーマンスを発揮できる非常に便利な機能です。他方で追加料金が発生する、有効化に時間を要する等、注意しなければならない点もあります。

スナップショット復元の利用用途に応じて上手く活用していきましょう。

元記事発行日: 2024年03月18日、最終更新日: 2024年04月08日