AWS Local Zones 使ってみませんか
みなさんは日頃 AWS を利用されていますでしょうか。AWS は2006年のサービス開始以後、コンピューティング、データベース、ストレージから、最近では生成系 AI など多岐にわたるカテゴリーのサービスを次々とローンチしています。またサービスを提供するための物理的ロケーションであるリージョンや、このリージョンを構成する AZ も続々とローンチしています。アジアでは、2025年1月7日にタイのリージョン(API名:ap-southeast-7)がローンチされました。
...あれ、でもタイってこれまでリージョンなかったっけ?
調べてみるとタイで利用できたのは AWS Local Zones でした。普段、日本国内のリージョン(東京・大阪)を中心に見ており、あまり気にしたことがなかった AWS Local Zones について、せっかくなので概要や機能についてこの機会にまとめてみたいと思います。
目次
AWS Local Zonesとは
AWS Local Zones は、ユーザーに地理的に近い場所でサービスを提供し超低遅延を実現する、AWS インフラストラクチャのデプロイサービスです。2025年1月時点で35のリージョンがあり、AWS Local Zones はこのリージョンといわば親と子のような関係にあります。執筆時点では、AWS Local Zones は世界34都市圏で利用可能となっています。
【AWS Local Zones の所在地】
引用元:https://aws.amazon.com/jp/about-aws/global-infrastructure/localzones/locations/
紫色の点が一般利用可能な AWS Local Zones、緑色の点が今後ローンチされる予定の AWS Local Zones です。タイの AWS Local Zones はシンガポールリージョンが親として、台湾の AWS Local Zones は東京リージョンが親として存在します。大阪リージョンを親とする AWS Local Zones はありません。(2025年1月時点)
AWS Local Zones の最大の特徴は、上述の通り地理的にユーザーに近いことで、アプリケーションのレイテンシーを小さくできる点です。本ブログでは、この AWS Local Zones がどのように機能するのか、少しだけ具体例にも触れながらお話ししていきます。
参考) AWS グローバルインフラストラクチャマップ
引用元:https://aws.amazon.com/jp/about-aws/global-infrastructure/
緑色の点が稼働中のリージョン、赤色の点が今後ローンチ予定のリージョンです。アジアパシフィックには、14のリージョンと44のアベイラビリティゾーンが展開されています。(2025年1月時点)
AWS Local Zones を利用するメリット
例えば、リアルタイム性が求められるアプリケーションやストリーミングサービスにおいては、わずかな遅延がユーザーの体験に大きな悪影響を及ぼすことがあります。しかし、AWS Local Zones を利用することで、こうした遅延を最小限に抑えることが可能です。これが最大のメリットです。
さらに、AWS Local Zones はデータをローカルゾーンに残すように設定可能です。例えば、特定の規制やコンプライアンス要件に基づき、データを地理的に特定の場所で保管しなければならない場合でも、AWS Local Zones を活用することでこの要件を満たすことができるようになる可能性があります。
コンプライアンス要件を満たしつつ、顧客満足度の向上を実現することができれば、ビジネスの成長を促進させることができそうですね。AWS Local Zones の有効化自体はそこまで難しいものでなく、AWS マネジメントコンソールから数クリックすれば利用可能な状態にできます。
【設定画面】
利用したいサービスの設定画面より「有効化」することで AWS Local Zones を利用することができるようになります。
AWS Local Zones のユースケース
AWS Local Zones は、さまざまな業界やシナリオで活用されています。以下はその代表的なユースケースです。
1. ゲーム業界
オンラインゲームでは、プレイヤー間の公平性や快適なプレイ体験を実現するために、低遅延のネットワーク環境が不可欠です。AWS Local Zones を利用することで、各地域のプレイヤーが超低遅延の環境でゲームを楽しむことができます。
2. メディアとエンターテインメント
ライブストリーミングや動画配信において遅延が発生すると、視聴者の体験が悪化してしまいます。AWS Local Zones を活用することで、視聴者に近い場所でデータ処理を行い、リアルタイム性の高いサービスを提供できます。
3. 医療業界
医療分野では、患者データの即時処理や遠隔手術支援など、超低遅延が要求されるシナリオが増えています。AWS Local Zones を活用することで、これらのニーズに応える高度なインフラストラクチャの実現が可能となります。
非常に簡単な紹介ですが、これだけでも様々な活用例が思い浮かんでくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
AWS Local Zones 利用時の考慮事項
AWS Local Zones を利用する際には、いくつか考慮すべきポイントがあります。まず挙げられるのは、提供されるサービスの種類が AWS リージョンに比べて限定的であることです。これにより、必要な機能が十分に利用できない場合があるため、導入前にサービス内容を十分に確認することが重要です。
またこれは AWS の利用する上で共通事項ですが、特に初期導入時には設定やアーキテクチャ設計に関する知識が必要です。この点で、AWS の専門知識を持つチームやコンサルタントのサポートを受ける体制があるかないかが重要となってきます。
冒頭に記載したタイリージョンのように、AWS Local Zones の提供しかなかった地域にリージョンがローンチされることも今後想定されます。そのため、より多くのサービスを使うために AWS Local Zones からリージョンの利用を行いたいとなるケースもあるかと思います。その場合、移行などを検討する必要が生じますが、このとき初期導入時などと同様に AWS に対する一定の知識が求められます。
AWS Local Zones まとめ
本ブログでは、AWS Local Zones についてお話しして参りました。AWS Local Zones は、低遅延の実現やデータのローカル保存、迅速なビジネス展開を可能にする非常に魅力的なサービスです。有効に活用することができれば、飛躍的にビジネス伸長させることができます。
一方で、提供されるサービスの範囲がリージョンに比べて少ないなど、いくつかの特有の考慮事項があります。
AWS Local Zones の利用を検討する際には、慎重な計画と専門的なサポートが必要です。一朝一夕ですぐに利用することができるかというと、決してそういうわけではないため、本ブログを読んで AWS Local Zones の活用に興味を持たれた方は、弊社へご相談ください。AWS の特性を最大限に活かした最適なソリューションを提供し、皆様のビジネスの成功を全力でサポートいたします。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
元記事発行日: 2025年01月22日、最終更新日: 2025年01月17日